36協定とは何なのか?今一つよく分からないこのルールとは

働き方改革によって、これまで事実上の無制限だった残業時間に対して、一定の規制がされるようになりました。
 

仕事をしている人のほとんどが「残業」を経験したことがあると思うのですが、「残業」正確には「時間外労働」は何を根拠になされるのでしょうか。
 

【筆者】加藤社会保険労務士事務所 社会保険労務士 加藤一徹
日本大学農獣医学部卒業後医薬品メーカーに勤務し、開業医や調剤薬局を中心に営業として担当。
開業後は医療業界の人事労務を中心に顧客はもちろん、その従業員にも満足いく支援を目指し活動中。
その他、web記事の作成にも積極的に参加中。

 



労働基準法と36協定の歴史と関係性

36協定とは、正しくは「時間外労働・休日労働に関する協定届」のことです。
 
この条項が労働基準法の第36条にあったことから、この協定は36協定と呼ばれています。
 

労働基準法においては、労働時間は1週40時間、1日8時間以内と定められています。これを超過して労働をさせることは違法となります。
 

簡単にいうと、36協定は労働基準法に定められた時間を超えて労働させても即時に違法状態とならないための免罪符です。
 

日本における労働関係法の歴史

日本における最初の労働関係法は、1916年(大正5年)に施行された「工場法」です。
 

この法律において、適用された範囲は、常時15人以上を使用する工場あるいは、事業が危険または有害な一定の工場と限定的でした。
 

規定された労働時間等に係わる内容は次の通りです。
 

「[1]最低入職年齢を12歳としたうえ、[2]15歳未満の者および『女子』について、最長労働時間を12時間とし、深夜業(午後10時から午前4時)を禁止し(例外と長期の適用猶予あり)、休憩の基準(6時間を超えるときは30分、10時間を超えるときは1時間)および休日の基準(毎月2回以上)」
引用:広報誌「厚生労働」|厚生労働省

 

つまり、法による労働者の保護の対象とされたのは、ほとんどが年少者と女性に限定されたもので、男性労働者に対しては、さらに限定された内容でしかありませんでした。
 

明治から大正へと近代化を進める日本の労働産業は、日中仕事の農業から丸1日工場が稼働している近代工業へと移り変わるにつれて、労働環境も長時間労働を前提として形成されていきました。
 
そのような中、「労働基準法」は1947年に制定されました。
 

労働基準法と36協定の関係とはどのようなものか?

労働基準法は1987年の改正を経て、適用範囲はほぼ全業種にわたる事業が列挙され、法定労働時間は1日8時間、週40時間以内と定められ、対象労働者も男女の区別なく、労働者全般とされました。
 

ここで注目する点は、「労働基準法」だけでは時間外労働をさせると、それだけで違法状態になるということです。
 

そのため、「労働基準法」制定と同時に、この規制を免れるための方法が生まれました。
 

労使間で取り決めを結ぶことで、法定労働時間の上限を超えることを認める、労働基準法第36条がこれに当たります。
 

この「36(さぶろく)協定」そして「特別条件付36協定」さえ結べば、制限はある形式でも、事実上、無制限に時間外労働ができるようになったことが、残業が日本の会社社会の悪習となった原因の1つでしょう。
 

働き方改革による残業時間の上限規制(より実効性のある規制となるために)

時間
 
 

2019年4月から「働き方改革法案」が施行されました。
 

その中でも注目される「残業時間の上限規制」について説明します。
 

働き方改革の目玉の1つ「残業時間の上限規制とは」

従来の「残業時間の上限」は大臣の告示に留まり、上限を超えても、行政指導が入る程度でしたが、この改革によって、「残業時間の上限」は労働基準法に明記され、さらに、違反に対しては罰則も設けられています。
 

そのため、残業時間の上限についての例外を認めるための36協定についても、その内容はもちろん、申請の様式についても厳格化がなされることになりました。
 

これは画期的なことで、これまで実質的には無制限であることを見逃されてきた残業時間について、労働基準法・36協定に対して実効性を持たせることで「残業時間の上限規制」を遵守させるための法整備と実務における適正な労務管理の重要性を示しているのです。
 

具体的には、時間数の厳格化のほか、原則の残業時間の上限規制を超えての残業を設定した特別条項付き36協定の場合であっても、・残業をさせる理由・延長した場合であっても、その限度時間数と休日労働日数の上限設定・残業をさせるにあたっての手続き等が厳しく定められました。
 

つまり、通常の業務が滞っているので、暗黙の了解で残業や休日労働をさせるといったことは、企業としてあり得ないこととなります。
 

残業時間の上限規制を強化するための他の施策

労働基準法における残業時間の上限規制それ以外にも、月60時間超の残業に対する割増率を5割とすることについて、大企業に対しては2010年に適用された一方、中小企業に対しては猶予されていましたが、これが2023年4月から廃止されることとなりました。
 

例えば、時間外労働時間が65時間であれば、60時間分の割増率は2割5分に加え、5時間分の割増率は5割となります。
 

さらに、深夜時間帯に月60時間超の労働をさせた場合、深夜割増の2割5分に、60時間超割増の5割が加算となります。この場合は割増率が7割5分となります。
 

つまり、過剰な残業が人件費増となり、高負担となることで、残業時間の抑制が期待できます。
 

残業時間の上限規制の詳細について

残業時間の上限は、原則として下記の通りです
 

  • 月45時間
  • 年360時間

 
臨時的な特別の事情がない限りは、これを超えられません。
 

臨時的な特別の事情があり、かつ労使が合意する場合でも、下記の3つの条件を越えない範囲となります
 

  • 年720時間以内
  • 複数月の平均80時間以内(休日労働を含む)
  • 月100時間未満(休日労働を含む)

 

原則である月45時間を超えることができる月数にも制限があります
 

  • 年間6か月まで

 

上限規制の適用が猶予あるいは除外されている事業もあります
 
<中小企業における猶予>

  • 残業時間の上限規制の適用:2020年4月1日から
  • 月60時間超の残業の、割増賃金率引上げの適用:2023年4月1日から

 

以下の事業・業務が猶予されます
 

  • 自動車運転の業務における上限規制の適用:改正法施行5年後
  • 建設事業の業務における上限規制を適用:改正法施行5年後
  • 医師の業務における上限規制を適用:改正法施行5年後
  • (鹿児島県及び沖縄県)砂糖製造業の業務における上限規制を適用:改正法施行5年後
  • 新技術・新商品等の研究開発業務における時間外労働の上限規制は適用しない:

    医師の面接指導、代替休暇付与等の健康確保措置を設けた上

 

36協定に違反するとどうなるのか?罰則や規制について解説

時間外
 

36協定を締結せずに残業や法定休日出勤をさせることはもとより、36協定の上限を超える時間外労働をさせた場合も法律違反となります。
 

従来は仮に違反となった場合でも、その企業が行政指導を受ける程度のものでしたが、「残業時間の上限規制」によって、罰則が「6ヵ月以下の懲役又は30万円以下の罰金」になりました。
 

また、36協定違反で罰則の対象となるのは、企業だけではなく、労務管理担当の責任者にも及ぶことになりました
 

さらに、労働基準監督署は、毎年、労働基準法違反についての送検事例を公表しています。
 

書類送検されると企業名を公表されることになりますので、いわゆるブラック企業のイメージダウンと、近年のインターネットやSNS等での情報拡散による影響は免れないでしょう。
 

まとめ

「労働基準法」上、時間外労働・休日労働をさせることは違法な行為となります。
 

これを合法とするために、36協定が存在するのですが、今までは、あくまでも形式的なものでしかありませんでした。
 

そのため、36協定の内容によらず、締結してしまえば無制限に時間外労働をさせることができる状態となりました。
 

しかし、働き方改革の残業時間の上限規制によって、罰則の付された労働基準法と相まって、残業時間の上限についての免罪符でしかなかった36協定は実効性のある有意なものとして労使間の協定としてはもちろん、日々の労務管理の上でも重要になります。
 

これから、企業や労務管理の責任者は時間外労働・休日労働を計画するのであれば、必ず協定を結んだ上で届け出る必要があり、かつ、常日頃から従業員の時間外労働・休日労働についての時間を超過しないよう、正確に把握しておかなくてはいけないことをよく理解する必要があります。

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