36協定届出が2021年4月から新様式へ!新様式への対応策と注意点

2021年4月から、36協定届の様式が新様式に変更となりました。
 

2021年3月31日までに提出するものでは、従来使っていた旧様式での届出が可能ですが、2021年4月1日以降に届出の者については、原則、新様式での届出が必要になります。
 

ここで注意すべきポイントは、36協定は一度届け出たら、それで終わりとなるものではなく、有効期限のある届出であるということです。
 

すでに提出済みの事業所であっても、協定の更新の際には新様式での記載と届出が必要になります。
 

詳しくご紹介します。
 

【筆者】加藤社会保険労務士事務所 社会保険労務士 加藤一徹
日本大学農獣医学部卒業後医薬品メーカーに勤務し、開業医や調剤薬局を中心に営業として担当。
開業後は医療業界の人事労務を中心に顧客はもちろん、その従業員にも満足いく支援を目指し活動中。
その他、web記事の作成にも積極的に参加中。

 

36協定とは具体的にどんな協定なのか?

まずは、36協定の概要についてご紹介します。
 

労働基準法において、労働時間は原則として、週40時間、1日8時間以内とすることが定められています。
 

また、法定の休日については週1日と定められています。
 

ちなみに、法定労働時間を超えて時間外労働をさせた場合、あるいは法定時間内であったとしても、法定休日に労働をさせた場合は、労働基準法第32条および35条違反となります。
 

さらに第32条および第35条違反は、同法第119条に基づき、6ヶ月以下の懲役又は30万円以下の罰金に処されます。
 

36協定は、事業主が時間外労働や休日労働をさせること自体を違法としないために必要な協定です。同時に、労働者を過度の長時間労働から守るために必要な協定なのです。
 

36協定についてはこちらの記事でも解説しているので、ご覧ください。
 

新様式の36協定は何が変わったのか?旧様式との違いは?

チェック
 

新様式の36協定の変更点についてご紹介します。
 

変更点は下記の3点です。
 

  • 使用者や従業員の押印・署名が不要になった
  • 協定当事者(労働者側)に関した、チェックボックス欄が新設された
  • e-Govからの電子申請が可能になった

 

以下にそれぞれの変更点についての説明をします。
 

使用者や従業員の押印・署名が不要になった

新型コロナウイルス感染症の急拡大とテレワークへの移行によって、脱ハンコの必要性が高まりました。
 

その結果、2020年に認印全廃が発表されました。
 
その結果、約15,000件と言われる押印が必要な行政手続きのほぼすべての手続きで、押印が不要となりました。
 

なお、これ以降も押印が必要な手続きは不動産登記や法人登記等の83件のみです。
 

協定当事者(労働者側)に関した、チェックボックス欄が新設された

チェック欄では次の点が確認されます。
 

  • 協定当事者である労働組合又は労働者代表が事業所の全ての労働者の過半数を代表する者であること
  • 労働者代表が、監督又は管理の地位にある者でないこと
  • 投票、挙手等の方法によって選出された者であって、かつ、使用者の意向に基づき選出された者でないこと

 

つまり、36協定提出の際に添付が必要とされる協定届の適正状況を確認されることになり、チェックボックス形式になったから、簡単なものになったというわけではないため注意が必要です。
 

e-Govからの電子申請が可能になった

従来は36協定に関連する書類は、事業所ごとに作成し、それぞれの事業所の管轄の労働基準監督署に提出する必要がありました。
 

これが新様式となり、電子申請をする場合に限って、各事業所で36協定を締結する必要はありますが、申請は本社が一括してすることも可能になりました。
 

届出の新様式7種類の違いについて

次に、届出の新様式について解説します。36協定の届出の際の用紙はこれまでは1つでしたが、2021年4月以降は申請内容や業務によって使用する用紙が下記にように異なるものになります。

  • 様式第9号  :時間外労働・休日労働に関する協定届(特別条項なし)
  • 様式第9号の2:時間外労働・休日労働に関する協定届(特別条項あり)
  • 様式第9号の3:時間外労働・休日労働に関する協定届
             (新技術・新商品等の研究開発  業務)
  • 様式第9号の4:時間外労働・休日労働に関する協定届
             (自動車運転者、建設業、医師  等)
  • 様式第9号の5:時間外労働・休日労働に関する協定届
             (事業場外労働のみなし労働時  間について)
  • 様式第9号の6:時間外労働・休日労働に関する労使委員会の決議届
  • 様式第9号の7:時間外労働・休日労働に関する労働時間等設定改善委員会の決議届

 

以下にこれらの様式の使い分けについて説明します。
 

時間外労働・休日労働に関する協定届(特別条項なし)

様式第9号は、時間外労働・休日労働に関する協定届であり、特別条項なしの一般条項です。
 

法定時間外労働の限度時間内で時間外・休日労働を協定する場合に届出が必要です。
 

時間外労働・休日労働に関する協定届(特別条項あり)

様式第9号の2は、時間外労働・休日労働に関する協定届であり、一般条項です。
 

法定時間外労働の限度時間を超えた時間外労働や休日労働を協定する場合は、特別条項付き様式で届け出る必要があります。
 

時間外労働・休日労働に関する協定届(新技術・新商品等の研究開発業務)

様式第9号の3は、時間外労働・休日労働に関する協定届:新技術・新商品等の研究開発業務に関する届出書です。
 

適用除外業務の労働者に対して、時間外・休日労働を行わせる場合に必要となります。
 

時間外労働・休日労働に関する協定届

様式第9号の4は、時間外労働・休日労働に関する協定届です。
 

適用猶予期間中における適用猶予事業・業務に用いられ、自動車運転者、建設業、医師等に適用されます。
 

適用猶予期間中、適用猶予事業・業務の労働者に対して、時間外・休日労働を行わせる場合に必要です。
 

時間外労働・休日労働に関する協定届

様式第9号の5は、時間外労働・休日労働に関する協定届です。
 

適用猶予期間中に、適用猶予事業・業務を行う場合に、事業場外労働のみなし労働時間についての協定の内容を36協定に付記して届け出る場合に用いられます。
 

適用猶予期間中、適用猶予事業・業務に対して、事業場外労働のみなし労働時間についての協定の内容を、36協定に付記して届け出る必要があります。
 

時間外労働・休日労働に関する労使委員会の決議届

様式第9号の6は、時間外労働・休日労働に関する労使委員会の決議届です。
 

適用猶予期間中、時間外労働・休日労働についての労使委員会の決議を届け出る必要があります。
 

時間外労働・休日労働に関する労働時間等設定改善委員会の決議届

様式第9号の7は、時間外労働・休日労働に関する労働時間等設定改善委員会の決議届です。
 

適用猶予期間中、時間外労働・休日労働についての労働時間等設定改善委員会の決議を届け出る必要があります。
 

届出についての注意点

届出についての注意点を見ていきましょう。
 

36協定は形式上作成すればいいというものではありません

まず、注意点の1つ目として、協定を結ぶ際の「起算日」があります。2021年4月以降の協定の場合、「2021年4月1日」と記載します。
 

しかし、労使間で起算日について合意していても、「2021年4月1日」までに未届出になっていると法的に無効となります。
 

例えば、上記の起算日の協定で、実際に届出を行ったのが5月1日だった場合、2021年4月中の時間外労働・休日労働は、すべて労働基準法違反となります。
 

届出の効力は、提出日前についての36協定を有効にすることはできません。起算日までに必ず36協定届を提出するよう注意が必要です。
 

次に、36協定を定める書類には、協定書と協定届の2種類があります。
 

実はこの2つには違いがあり、イメージとしては、協定書が原本で協定届が届出用のような関係にあります。
 

協定書は36協定を書面によって締結したもので、労使間での合意・締結を証明するため、使用者と従業員代表者それぞれの署名・押印が必要になるものです。
 

一方で、協定届は労働基準監督署に提出するために作成する書面です。
 

行政官庁への手続きのため、署名・押印は不要で、記名のみで提出可能になります。
 

ただし、協定書なしに協定届を提出する場合は、協定届に労使それぞれの署名・押印が必要です。
 

このように36協定を作成して届出をする際には注意が必要な点がありますので、疑問や不安な点がある場合は専門家に相談することも重要になるでしょう。
 

まとめ

36協定は届出が終わればそれでよいものではありません。
 

36協定を締結せずに残業や法定休日出勤をさせることはもとより、上限を超える時間外労働をさせた場合も法律違反となり、6ヵ月以下の懲役又は30万円以下の罰金となる可能性があります。
 

罰則の対象となるのは企業だけでなく、労務管理を行う責任者にも及ぶこともあります。
 

36協定違反を放置していると、責任者個人も罰せられる可能性がありますので、注意が必要です。
 

そのためにも、労働者に残業をさせる場合は、適切な勤怠管理をはじめとして、労働者の健康に留意し、休息時間を確保する必要があります。

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