ABWとは?フリーアドレスと何が違う?導入メリット・デメリット比較や導入事例を紹介
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Withコロナという状況下で、リモートワークに切り替えた会社の中には、さらに働きやすく時代に沿った会社のあり方を模索しているところも多いでしょう。
ABWは、フリーアドレスよりもさらに自由度の高い働き方として知られています。
ここでは、ABWについて、メリットやデメリット、導入の手順のポイントをご紹介していきます。
▼目次
ABW(Activity Based Working)とは?
出典:「ABW」という新しい働き方 84%が生産性向上を実感!
ABWとは、「Activity Based Working」からきた言葉で、個人の自由で仕事場所が選べる働き方のことを指します。
元々、ABWはオランダの「Veldhoen + Company」という企業が1990年代に世の中に広めた概念です。「Veldhoen + Company」は仕事を10の活動(上記画像)に分類し、それに応じたオフィススペースを作るのがABWです。
その時に従事している業務の内容や気分により、適した場所や時間を自由に選べる、フレキシブルなワークスタイルです。
仕事をする上で、好ましい環境は人によって異なります。また、同じ人でも業務内容によってより良い環境は変わってきます。
ABWを取り入れると、集中しなければならない時は周囲の雑音が気にならないような静かなスペースを使い、アイデアを提出しなければならない時はカフェやのどかな公園で考えるなど、その時々に応じて自分の身を置きたい場所は変化します。
こうした個人の働き方や働きやすさを考慮したのが、ABWです。リモートワークやフリーアドレスよりもさらに発展し、自由度が高いとして注目を集めています。
ABWが注目される背景とは
ABWが注目される背景には、働き方改革とコロナ禍での環境変化が大きく関係しています。
日本に古くからある長時間労働重視の働き方により、残業時間の長さや労働生産性の低さが日本社会の課題としてありました。
それを解消すべく「働き方改革」が打ち出され、労働環境の改善や働き方の多様化の考えが広まりました。
しかしながら日本企業の多くは抜本的な改革に踏み切ることができなかったのですが、そんな中コロナウイルスの影響で半ば強制的にリモートワークに踏み切ることとなりました。
リモートワークが広がることで、働く環境がオフィスに限らずその他の選択肢も出てくる中で、従業員それぞれに業務をしやすい環境があり、働きやすい環境を選択することで生産性があがるということから、ABWというオフィス環境が注目されることとなりました。
こういった働き方に対するニーズに対応するためにも、ABWは導入が必要とされ、現代にふさわしい働き方であると注目が集まっています。
ABWとフリーアドレスの3つの違い
ABWとフリーアドレスは、しばしば混同されがちです。ここでその違いについて見ておきましょう。
ABW | フリーアドレス | |
---|---|---|
働く場所 | オフィス内外 | オフィスのみ |
導入目的 | 従業員の働きやすさ | コスト削減 |
導入側の視点 | 従業員 | 運営側 |
働く場所の違い:オフィス限定かオフィス内外か
両者の大きな違いは、働く場所にあります。フリーアドレスも自由に働く席を選ぶことができますが、その範囲はオフィスの中に限られます。
個人のデスクを固定せず、その日の気分や業務に合わせてオフィス内を自由に使うという考え方です。
一方、ABWはオフィス内にとどまらず、家やカフェ、民間のワーキングスペースなどより自由に豊富な選択肢の中から選ぶことができます。
導入目的の違い:オフィス利用のコスト削減と従業員起点の環境づくり
次に、目的の違いについても見ていきましょう。フリーアドレスが導入された目的は、オフィスを効率的に使うことによるコスト削減が主となっています。
ABWの考え方は、従業員の働きやすさを重視した、従業員目線での取り組みです。
それぞれの働きやすい環境の違いを尊重した上で、フリーアドレスの良さも取り入れながら環境を整えていくという目的もあります。
導入側の視点の違い:オフィス環境の効率化と働き方そのものの変革
フリーアドレスは、固定席を設けないことでより多くの従業員が働けるという、運営側の視点からみたメリットが大きい働き方です。
従業員にとってある程度の自由はありますが、限られた面積を有効に活用できるという意味から導入されるケースも少なくありません。
一方、ABWは従業員の働き方そのものを柔軟にし、さまざまなメリットが得られるように取り入れられる、従業員目線に立った働き方。
場所や時間に縛られず、その時に一番適切な環境を選べるという自由度の高さが特徴です。
以上がABWとフリーアドレスの違いです。フリーアドレスについて詳しく知りたい方は、こちらの記事も参考にしてください。
フリーアドレスとは? 導入のメリット・デメリット、失敗回避の手順やポイントを解説
ABW導入のメリット・デメリットを解説
現在注目される働き方として、多くのメリットがあるABWですが、もちろん導入によるメリットだけでなくデメリットも存在します。
ABWのメリット・デメリットの両方を理解して、自社にはABWが適しているかどうかを確認してみましょう。
ABW導入のメリットとデメリットを一覧にして比較してみました。
ABW導入のメリット |
・作業効率、生産性の向上 ・ファシリティコスト削減 ・プライベートな時間の増加 ・優秀な人材の獲得と定着 |
ABW導入のデメリット |
・良さを実現するまでに時間がかかる ・労務管理の煩雑化 ・初期投資がかかる ・コミュニケーションが取りにくくなる |
ABW導入のメリットは4つ
- 作業効率、生産性の向上
- ファシリティコスト削減
- プライベートな時間の増加
- 優秀な人材の獲得と定着
ABWを導入することは、従業員と会社の両方にメリットがあります。
作業効率、生産性の向上
ABWを取り入れると、自分の仕事内容に応じて適切な環境を選ぶことができ、作業効率を高めると言われています。たとえば1人で集中したいときは個室を利用し、周りの雑音に邪魔されることなく仕事を進めることができます。
もしくは、複数人集まって意見交換したいときはカフェスペースなどを利用することで、堅苦しくならず多くの意見を集めやすいでしょう。
社員同士の関わりが増すことで新しいアイデアが生まれるなど生産性の向上も期待できます。
ファシリティコスト削減
ABWを導入するとオフィスの外から働く人も増えます。それによって使われないスペースが発生し、従来のオフィス規模を縮小することが可能となります。
オフィスの賃料だけでなく、光熱費削減にもつながり、コストを削減することができるでしょう。
プライベートな時間の増加
自宅や自宅周辺のカフェなどを仕事場に選ぶことは、通勤にかかる時間の短縮やプライベートな時間の増加につながります。
育児や介護との両立、趣味時間の確保など、ワークライフバランスが整いやすい点もメリットです。
優秀な人材の獲得と定着
先進的な働き方を取り入れその良さを発揮できる会社は、それだけ従業員にとっても魅力的な場所となります。
優秀な人材が集まりやすく、また従業員の離職も防ぎやすくなるでしょう。
ABW導入のデメリットは4つ
- 良さを実現するまでに時間がかかる
- 労務管理の煩雑化
- 初期投資がかかる
- コミュニケーションが取りにくくなる
良さを実現するまでに時間がかかる
ABWは、長きにわたり定着した働き方とは違う部分もあり、せっかく導入してもその変化に従業員がすぐ対応できるとは限りません。
従業員一人ひとりが、その目的を理解するだけの説明や、目標の共有が十分に行われる必要があります。
労務管理の煩雑化
導入前に比べると勤怠管理が難しくなるため、事前にルールを設けるなどの準備が不可欠です。
ABWは従業員の自律性や主体性によって支えられるため、場合によっては人事評価に不満を抱く人も出てくる可能性があります。
初期投資がかかる
ABWのスムーズな導入には、初期投資が必要になることも。勤怠管理を含めセキュリティ問題への対策やコミュニケーションツールの導入などを検討しなくてはいけません。
DX化が遅れているという企業は、初期段階でかかるコストが大きくなってしまう可能性があります。
長期的な視野で抑えられるコストと、初期にかかるコストを比較検討するとよいでしょう。
コミュニケーションが取りにくくなる
働く場所が人それぞれ異なることで、同じチームのコミュニケーションが取りにくくなることが考えられます。
一緒に進めるプロジェクトなどがある場合、コミュニケーション不足が大きな失態に繋がりかねません。
チャットツールを活用したり、定期的にミーティングを設定したり工夫することで、コミュニケーションの問題は改善されるでしょう。
ABW導入の手順は4ステップ
ABWを導入するためには、大きく分けて4つのステップが必要です。
- 職場やオフィスの状況、従業員の働き方の実態を調査
- オフィスやワークプレイスのレイアウトを検討
- ネットワーク環境整備やセキュリティ対策などのセキュアな環境構築
- 評価制度や社内コミュニケーション促進などの制度設計
ここでは、具体的にABW導入に向けた手順を確認していきましょう。
手順1. 職場やオフィスの状況、従業員の働き方の実態を調査
まずは職場やオフィスの使い勝手や従業員の働き方の実態をよく把握します。
こうすることで、改善に向けたポイントやニーズを絞りやすくなります。ABW導入の大きな目的は、従業員の働きやすさの実現です。
従業員の意見をできる限り取り入れることができるよう、それぞれが発言しやすいシステムを作ると良いでしょう。
手順2. オフィスやワークプレイスのレイアウトを検討
オフィス内でもバラエティに富んだ環境を整備するために、集中できる1人用ブースやカフェブース、リラックスエリアなどを設けていくこととなります。
レイアウトについては、電源の確保や導線、セキュリティなどの観点から慎重に検討する必要があるため、専門家のアドバイスを得ながら決めていくことをおすすめします。
手順3. ネットワーク環境整備やセキュリティ対策などのセキュアな環境構築
オフィス外からでも社内ネットワークにアクセスできるような、環境整備も必要です。
リモートデスクトップ方式やクラウドアプリ方式などのシステム方式の導入を検討し、どこにいても快適に仕事ができる環境を整えます。
また、パソコンの紛失や盗難リスクへの対策、ルールの構築などセキュリティに関わる準備と教育も行います。
手順4. 評価制度や社内コミュニケーション促進などの制度設計
ABWは従業員それぞれの自律性と主体性がなければ、その良さを十分に感じることはできません。
従業員の主体性が高まるような評価方法を用いて、ABWにマッチする評価制度へと変えていきましょう。
従業員同士の物理的な距離の広がりによりコミュニケーションが薄くなるリスクもあるため、その点をクリアできるようなルール作りも必要です。
ABWを導入したオフィスの設備例
ABWど導入したオフィスには、どんな設備やスペースがあるのでしょうか。
ここでは、2014年よりABWを自社で実践し、同時に多くの企業のオフィス課題の解決策として提案してきた三井デザインテック社のオフィススペースを例に挙げて紹介していきます。
以下参考:社員が会社に来たくなる | 最新不動産ニュースサイト「R.E.port」
執務スペース
多くの従業員が業務を行う執務スペースは、固定席を設けないフリーアドレス形式を取るのが一般的です。部門や部署ごとに特定のゾーンを設けることはあれど、その時の業務内容やプロジェクトに応じて、自由に座席を選んで働くことが可能となります。
ラウンジスペース
まるで落ち着いたカフェのように、執務エリアとはガラッと雰囲気の変わるラウンジスペースです。その日の気分に応じてや、ちょっとした打ち合わせ場所として使用することを想定しています。実際にカフェやドリンク設備が併設されているケースも多いです。
1人用集中ブース
従業員が自由にワークプレイスを選べるからこそ、誰にも邪魔されず集中できる場所を求める時に有効なのが集中ブースです。パーテーションなどで仕切られており、周りの会話などを遮って自身の業務に集中できる設計となっています。
Web会議用ブース
コロナ禍によりWeb会議が普及したことで、場所を問わずWeb会議が行われることが一般的となる中で、逆に「Web会議用の会議室が空いていない」ということを経験した人も多いでしょう。
それを避ける意味でも、Web会議専用のブースを設けることで、会議スペースを探すという手間からも解放されることでしょう。
イベント対応可能の多目的スペース
最後は広いスペースを設けた多目的スペースです。
社内外の交流をはかるためのイベント開催を行なったり、終業後のコミュニケーション促進のための飲食スペースとして活用が目的です。
写真のように、屋外テラスのような場所を設けられれば、より一層従業員が働く場所を選ぶ選択肢が増え、満足度向上に繋がることでしょう。
ABWを導入した事例
ここからは、実際にABWを導入している企業をご紹介します。
皆さんもぜひ参考にしてみてくださいね。
アイリスオーヤマ株式会社
出典:アイリスオーヤマ流!働き方改革時代の新しいオフィスづくり (オフィス訪問[2])
アイリスグループ東京アンテナオフィスでは、2018年の移転をきっかけにABWを導入。
オフィスを会社の顔の一つとして、ここで働きたいと考えてもらえるようなオフィスづくりを目指しています。また、従業員目線で最大のパフォーマンスを引き出せるようなオフィス作りをしています。
ABWを導入したことで、他部署との交流ができ、従来ではなかなか機会のない情報共有が生まれたりする効果もあるそうです。
ヤンマー株式会社
出典:ヤンマーの企業理念を具現化したオフィスで働き方改革を加速 vol.2
株式会社ヤンマーでは、新本社ビル移転から1年後の2016年にABWを導入しました。
社員がより自律的でフレキシブルに働けるよう、共有スペースを広げたりコラボレーションゾーンを設置したりして気軽に仕事ができたり他部署との交流を促進させたりするための工夫をしています。
ABWの導入を経て、社員1人当たり最大60分程の労働時間短縮も実現しているそうです。
三井デザインテック株式会社
出典:三井デザインテック新本社『CROSSOVER Lab』開設 Well-Being な空間でイノベーションを誘発する新たな働き方を実現
ここでは、三井デザインテック株式会社がABWを導入し東京大学との共同研究によって発表された成果をご紹介します。
この研究では、三井デザインテック株式会社がABW環境を導入し、
- 個人の仕事のしやすさ
- チームの仕事のしやすさ
- コミュニティ形成のしやすさ
の3点について、その効果や相関性を分析しています。
結果としてABW環境を活用すると、個人の仕事においては生産性を高め、チームの仕事としては協調性を高めるなど、やりがいやウェルビーイングにつながる良い効果をもたらしていることがわかりました。
また、コミュニティ形成のしやすさについても、一体感や新しいアイデアが生まれるなどのメリットがみられました。
この研究では、特にオフィスへの滞在時間が長く、さまざまなエリアを使っている従業員が最もクリエイティビティやワーク・エンゲイジメントが高まることが明らかとなっています。
また、総合職と管理職とでは行動に伴う結果が異なる傾向にあるとし、総合職の場合はオフィスの中で多くの人と出会うこと、管理職はオフィスの中で異なる組織の人と接することがクリエイティビティを高めることに繋がると発表しています。
なお、三井デザインテック株式会社がABWを導入する上で、社内システムをクラウドサービスに移行しております。その事例や背景についてをこちらの記事で紹介しているので、こちらもご覧になってみてはいかがでしょうか。
まとめ
多様な働き方が推進される現代において、ABWを導入している会社に魅力を感じる人は少なくありません。
そのメリットを十分に得るためにも、まずは導入する目的や従業員の働き方に関する希望や意見を明らかにしていきましょう。
ABW導入には、さまざまな準備が必要です。手順を踏んで、ルールや体制づくりについても検討を重ねることをおすすめします。
オフィスDXの第一歩として「受付のDX」から始めよう!
・リモートワーク環境が整わず、出社しなければいけない従業員がいる
・社内をフリーアドレスにしたいけど移行できずにいる
・来客対応がアナログなまま効率化できてない
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