フードディフェンスとは?対策不足で起こる問題は?4つの取り組みで食品管理の安全性を高めよう
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フードディフェンスは従業員や外部関係者による、食品への意図的な異物混入を防ぐ取り組みです。
本記事では、フードディフェンスについて、概念やフードセーフティ、HACCPとの違いや具体的な取り組みを解説します。ぜひ最後までご覧ください。
▼目次
「意図的な混入」から食品の安全を守るフードディフェンス
フードディフェンスとは、食品に対する意図的な異物混入を防ぐ概念です。食品工場などでは、従業員や外部の人からの異物混入に常に警戒する必要があります。特に、意図的な混入は工場のセキュリティをかいくぐって行われるので注意しなければなりません。
以下でフードディフェンスについて、意図的な混入がどのような状況か、フードセーフティやHACCPとの違いはどういった点なのか解説します。
「意図的な混入」とはどのような状況か
意図的な混入とは、混入させた人が意識的に食品への異物混入を行っている状況を指します。食品に関する事故の中には意図しない異物混入もありますが、フードディフェンスで想定している状況は、基本的に意図した食品への異物混入です。
「意図的な混入」の1番のリスクは外部者の出入り
「意図的な混入」の発生経路として、1番は外部者による実行であるといえます。
一般的な工場であれば施設出入り口の施錠や監視カメラの設置などの対策を行っているのが普通ですが、それだけでなく外部者の入退場記録の管理が重要です。
万が一異物混入が起きてしまった場合でも、来場記録からその時刻に誰が工場・敷地内にいたのかを確認できるので、被害リスクを最小限に抑えることにつながります。
たとえば食用加工油脂、石けん・化粧品、飼料の製造販売を行う太陽油脂株式会社では、クラウド受付システムを導入することで、来訪者記録のデジタル管理・運用が可能となり、フードディフェンス強化を実現しています。
フードセーフティやHACCPとの違いとは
フードセーフティは、食品への異物混入の事故を防ぐための概念です。フードディフェンスとの違いは、異物混入が意図しているかどうかという点にあります。
HACCPは「Hazard Analysis Critical Control Point」の略称で1960年代のアメリカで宇宙開発が積極的だった時代に生まれた概念です。当時のアメリカでは、NASAを中心に衛生的な食品の開発が進んでいました。食品の衛生に関して、危険要因を分析し、その要因が生じやすい工程に基準を設けます。その基準にしたがった記録・管理を行うのが目的です。
HACCPは異物混入を想定していますが、その要因として異物混入の意図のある人の存在は想定していません。
フードディフェンスとフードセーフティ、HACCPの違いは食品への異物混入を意図している人を想定しているか、していないかという点です。
フードディフェンスが注目される背景
フードディフェンスが注目されはじめた背景には、2001年のアメリカ同時多発テロが関係していると言われています。当時、テロで大きな被害を受けたアメリカはインフラへの防備体制を強化しました。その際、食品も重要なインフラの1つと考えられ、フードディフェンスが注目されたのです。
以下では、国内でフードディフェンスが注目されはじめた背景やフードディフェンス対策の不足によるリスクや影響を解説します。
国内におけるフードディフェンスが注目されたきっかけ
日本国内では、フードディフェンスは食品の異物混入事件が取り上げられるとともに注目されるようになりました。具体的には、2007年の中国で製造された冷凍餃子への殺虫剤混入、2013年の日本国内の製造工場での農薬の混入があげられます。
国内で事件が起きると、国民の食品の安全に対する関心も高まり、フードディフェンスが注目される傾向があるようです。また、最近では新型コロナウイルス感染症の流行により、衛生への関心も高まっています。
こういった背景から、日本国内でも様々なきっかけでフードディフェンスへの注目が集まっているのです。
フードディフェンス対策不足によるリスクや影響とは?
フードディフェンスへの対策が不十分な場合、食品への異物混入リスクが高まります。異物混入リスクが高まると、企業と消費者の両方に大きな影響が生じるので、フードディフェンスでの十分な対策が必要です。
以下でフードディフェンスへの対策が不十分であることによる企業、消費者への影響をそれぞれ解説します。
企業への影響
フードディフェンスが不十分だと、企業の評判が下がったり取引先との関係構築に影響を及ぼしたりしてしまいます。食品には、衛生面の管理が極めて重要です。そのため、フードディフェンスが不十分であることは、異物混入のリスクが高まるだけでなく、企業の成長にも悪影響を与えます。
企業のイメージをよりよいものにし、消費者や取引先からの評価を得ていく点で、フードディフェンスは大きな影響があるのです。
消費者への影響
フードディフェンスが十分ではない場合、消費者の健康へのリスクが高まります。また、健康には影響がなくとも、異臭などによって食品の質が損なわれれば、料理の質も低下し、幸福度が低下する可能性が高いです。
フードディフェンスが社会的に十分ではない場合、消費者の食事の質が低下し、健康被害や幸福度低下の原因となるリスクがあります。そのため、フードディフェンスは消費者にとっても重要です。
フードディフェンスの3原則
ミドリ安全株式会社では、食品の安全を脅かすトラブルを未然に防ぐための「フードディフェンス3原則」を提唱しています。
この3原則では、
- 私物を持ち込ませない
- 不審物を入れさせない
- 見守る・死角をつくらない
といった項目が挙げられています。
これを実施するには、従業員一人一人にこの三原則を理解・実施してもらうことが必要です。食品に関するトラブルを防止することこそが、フードディフェンス対策で最も重要な項目であるとも言えるでしょう。
代表的なフードディフェンスの取り組み4選
フードディフェンスのためにできる対策は4つあり、以下の観点から取り組むことで意図的な異物混入を防げます。
- 人的要素(対外:部外者)
- 人的要素(対内:従業員)
- 施設管理
- 適切な組織マネジメント
これら4つの取り組みから対策することで、フードディフェンスを実践できます。
1. 人的要素(対外:部外者)
フードディフェンスにおいて重要なのは、人の動きの管理です。特に部外者への対策は以下のものがあげられます。
- 駐車場や施設内部の立ち入り管理(許可証など)
- 業者の所持品検査
- 郵便・宅配物を同じ場所で受け取る
- 訪問者への対応をマニュアル化する
部外者が意図的に食品へ異物混入するのは、施設内の管理体制が甘く、自由に移動できてしまうために起きることがあります。そのため、入管許可証を部外者には身につけてもらう、業者や郵便・宅配物は中身の検査を行うなどのチェックをすると効果的です。
また、来客には待合室で待ってもらうなど、人の動きを管理することで食品へ異物混入されるリスクを未然に防げます。
2. 人的要素(対内:従業員)
フードディフェンスで注意すべきなのは、従業員など対内的な人も含まれます。普段から業務に携わる従業員へのフードディフェンスは極めて重要です。対策として、以下のものがあげられます。
- 制服・名札の管理
- 私物の管理
- 従業員の配置管理
- 施設内の入退室管理
- 移動範囲の管理
対内へ向けたフードディフェンスでは、人員の管理や配置が重要です。具体的には、制服や名札をしっかり管理し、従業員を把握します。また、私物の持ち込みも管理し、混入する異物を持ち込めないようにすることも重要です。
他にも、入退室の際に社員証の認証を必要にし、権限を管理することで人の配置を把握しやすくなり、フードディフェンスにも役立ちます。
3. 施設管理
施設管理で重要なのは入退室の管理に加えて、営業時間外の無人の時間帯に施設をしっかり施錠するなどのセキュリティです。
たとえば入退室前に、一番最後に退勤する社員がチェックリストをつけるなどして、必要な施錠が行われているか確認する方法があります。また、必要があれば警備員を雇って施錠管理してもらうかたちのアウトソーシングも施設管理におすすめです。
他には人の力を借りなくても、施設内に監視カメラを設置すれば、施設への人の出入りを管理できますし、意図的な異物混入への抑止にもなります。
4. 適切な組織マネジメント
フードディフェンスを実践するには、それに適した組織づくりも重要です。組織全体でフードディフェンスができるような教育、管理体制の構築をすることで従業員も巻き込んで、会社全体でフードディフェンスに取り組めます。
また、異常が発見された場合であっても素早く報告や対策がとれる環境づくりがされていれば、異物混入が起きても素早く対処し、消費者への被害を未然に防げます。こうした組織マネジメントもフードディフェンスには重要です。
フードディフェンスの評価方法とは
フードディフェンスに取り組むにあたり、どのような観点で評価するのが適切なのか。
ここではフードディフェンスの評価方法を紹介していきます。いずれの評価方法も、FDA(米国食品医療品局)が提唱および普及させている評価方法となります。
1.CARVER+Shock法
CARVER+Shock法とは、主にアメリカ食品業界で多く使われている、フードサプライチェーンの各工程における危害に対する脆弱性を評価する方法のことです。
- Criticality(危険性)
- Accessibility(アクセス容易性)
- Recuperability(回復容易性)
- Vulnerability(脆弱性)
- Effect(影響)
- Recognizability(認識容易性)
- Shock(衝撃度)
以上のように、各評価項目の頭文字に由来しています。
2.ALERT
ALERTとは、フードディフェンス構築の際に考慮すべき5つのポイントです。
- Assure(保証)
- Look(注意・監視)
- Employee(従業員)
- Report(報告書)
- Threat(脅威)
3.FIRST
FIRSTとは、フードディフェンスに対する取り組みのためのプログラムのことです。企業の従業員教育の推進に使われています。
- Follow(会社のフードディフェンスプランとその手法に従うこと)
- Inspect(施設やその周辺を調査すること)
- Recognize(いつもと違う点を見逃さずに認識すること)
- Secure(すべての原料、製品の安全を確保すること)
- Tell(異常や不審者に気が付いたら上職者に情報を伝えること)
フードディフェンス対策に必要なシステム
フードディフェンスには人の力だけでなく、システムの活用も重要です。システムには様々な種類がありますが、その中でも以下のシステムはフードディフェンスに適しています。
- 入退室管理システム
- 防犯カメラ・監視カメラ
これらのシステムを導入することで、人の力がなくてもフードディフェンスを実践できます。
参考:製造業のDXとは?
1. 入退室管理システム
入退室管理システムは、IC社員証や静脈認証などのシステムを使って入退室したり、その履歴を管理したりするシステムです。入退室管理システムの中には、権限を管理できるものもあり、システムが許可しなければ、社員であっても入室できない部屋をつくることもできます。
また、従業員だけでなく、来場者の入退室管理も重要となります。万が一異物混入が起きてしまっても、来場履歴からその時刻に誰が工場・敷地内にいたのかを確認できるので、入退室管理システムはフードディフェンスに効果的なシステムです。
2. 防犯カメラ・監視カメラ
防犯カメラ・監視カメラは施設内の出入り口を映すように設置しておけば、不審者に対する抑止力になります。もし悪意のある外部の人が侵入を試みても、監視カメラに映ってしまえば犯行がばれますし、事故が起きた際の真相究明にも役立ちます。
また、施設内でも食品工場を映しておくことで、従業員など内部の人による異物混入を抑止できます。監視カメラの中には録画した映像をクラウド保存する機能があるものもあり、データ紛失によって異物混入の原因がわからない状況を防げるのもメリットです。
また、防犯カメラ・監視カメラが施設の要所にあるだけで異物混入の抑止が心理的にはたらきます。結果として、少ないリソースでフードディフェンスを実践できるので、食品を管理する施設へ設置する効果は大きいでしょう。
フードディフェンス対策を行う企業事例
最後に、実際にフードディフェンス対策を導入した企業の事例を紹介します。
食品メーカー:フードディフェンス用監視カメラシステムの導入
とある国内食品メーカーでは、薬混入事件をはじめ、異物、不良品混入などのトラブル回避を目的に、生産ラインに監視カメラシステムを計180台設置し、フードディフェンス対策の強化を行いました。
出典:フードディフェンス用監視カメラシステムの導入:導入事例:株式会社日立システムズフィールドサービス
工場内のネットワーク環境を活かし、監視カメラを新たに160台追加し、より多角的に生産ラインを監視できるようになりました。
太陽油脂(株):非接触の受付システム導入で来場者管理をDX化
食用加工油脂、石けん・化粧品、飼料の製造販売を行う太陽油脂株式会社では、守衛所の無人化に伴って来場者の受付システムを導入しました。
クラウド受付システム『RECEPTIONIST』を導入することで、来訪者記録の管理強化や、完全非接触の受付フローによるウイルス感染リスクの低下などを実現し、フードディフェンス対策の強化を行っています。
参考:フードディフェンス対応の非接触受付システムで工場のDX推進に大きく貢献
フードディフェンス対策を積極的に行おう
フードディフェンスについて、概念や具体的な対策、活用できるシステムについて解説しました。本記事で紹介したフードディフェンスを実践することで、食品への信頼や安心感が高まり、取引先や消費者から高い評価を得られます。
食の安全を守ることは企業の成長にも貢献してくれるので、本記事でフードディフェンスについて興味を持った方は、ぜひ自社で対策を実践してみてください。
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