年5日の有給休暇取得義務、対応は大丈夫ですか?
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約3年前に、70年ぶりに労働基準法が大改正され、労働基準法39条7項により年5日有給休暇取得が義務化されました。
改正当時は話題にのぼり、気にする人も多かったと思いますが、今もその注意は続いているでしょうか。
ここで改めて、年5日有給休暇取得義務についておさらいをし、さらに気を引き締めて対応していきましょう。
有給休暇取得の目的と背景
最初に、有給休暇取得の目的と背景について確認します。
そもそもなぜ義務化されたのか?いつから義務化されたのか?
働く人が、自分の事情に合わせた、多様で柔軟な働き方を自分で選ぶための「働き方改革」が起点になっています。
それに伴う労働基準法の改正で、2019年4月から一定の従業員に年5日有給休暇取得が会社に義務化されました。
自分の事情に合わせて多様で柔軟に働くためには、年次有給休暇を柔軟に取得できる環境が必要です。
しかし、2019年までの年次有給休暇取得率は、長らく50%前後でした。さらに、日本の有給休暇取得率は、世界の中で最下位です。
そこで、国は年次有給休暇取得率を上げるための政策を展開し、2025年までに年次有給休暇取得率70%を目標にしています。
年次有給休暇取得率取得率が低い原因として、厚生労働省の調査から年次有給休暇取得にためらいを感じる労働者が半数以上いることが分かりました。
ためらいを感じる主な理由は次のとおりです。
- 周囲への迷惑
- 年次有給休暇を取った後の多忙さ
- 職場の雰囲気
年次有給休暇の制度があっても、何らかの理由で取りづらい現実が伺えます。
そもそも年次有給休暇は、心身のリフレッシュを目的にしており、従業員が楽しく働き続けるためにも必要なものです。
年次有給休暇取得の義務化により、従業員が年次有給休暇を取りやすくなることが期待されています。
年次有給休暇取得義務化とは
ここで改めて、年次有給休暇と今回義務化されたことを確認してみましょう。
なにをしないといけないの
そもそも年次有給休暇取得義務化とは、なんでしょうか。
まず、義務化の対象になるのは、年次有給休暇が「10日以上」付与される労働者です。
「年次有給休暇を付与した日から1年以内に、5日の年休を労働者に取得させる」ことが、会社に義務化されました。
ここで改めて、年次有給休暇について解説します。
年次有給休暇は、一定期間勤続した労働者に対して付与される、心身の疲労を回復してゆとりある生活を保障するための休暇のことです。
その休暇は「有給」で休むことができるので、賃金が減額されません。
年次有給休暇が付与される要件は、2つあります。
- 雇い入れの日から6か月経過していること
- その期間の全労働日の8割以上出勤したこと
この要件を満たした通常の労働者は、10労働日の年次有給休暇が付与されます。
また、最初に年次有給休暇が付与された日から1年を経過した日に、上記の要件を満たせば、11労働日の年次有給休暇が付与されます。
この後は同様に要件を満たすことにより、一定の日数が付与されます。
なお、通常の労働者以外の労働者(週所定労働日数が4日以下かつ週所定労働時間が30時間未満の労働者)は付与日数が異なるため、注意が必要です。
ここで注目したいのは、年5日有給休暇取得が義務化されているのは「年次有給休暇を付与されるすべての労働者」ではなく「年次有給休暇を付与した日に10日以上付与される労働者」だけだという点です。
仮に年次有給休暇を付与した日に8日しか付与されなければ、対象の労働者にはなりません。
また、10日以上付与される労働者であれば、パートやアルバイトなど正社員以外の労働者にも対応しなければなりません。
パートやアルバイトは関係ないと考えるのは大きな間違いです。
中途入社の社員の有給休暇の扱いはどうなるのか?
中途入社の社員の有給休暇の扱いも、基本的には従前からいる社員と同じです。
雇い入れの日から6か月経過して、その期間の全労働日の8割以上出勤すれば10日が付与されます。
付与されたときから1年以内に年5日の年次有給休暇を取得させなければいけません。
ただし、会社によって年次有給休暇の扱いが違う場合があります。例を2つほどご紹介します。
1.雇い入れの日に10日を付与する場合
6か月経過を待たず、雇い入れの日から1年以内に年5日の年次有給休暇を取得させなければいけません。
2.管理がしやすいように年次有給休暇の付与日を全社的に統一している場合
例えば4月1日に全員に付与する場合は、雇い入れの日が4月30日の方でも、次の日5月1日に10日付与します。
そして、5月1日から1年以内に年5日の年次有給休暇を取得させなければいけません。
いずれにせよ、年次有給休暇を10日以上付与した日から1年以内に5日の年次有給休暇を社員に取得させなければいけません。
年次有給休暇取得違反するとどうなるのか?
年5日有給休暇取得義務に、違反するとどのような罰則が科せられてしまうのでしょうか?
どんな罰則が待っているの
年次有給休暇に関する罰則は大きく3つあります。
1.年次有給休暇を年5日取得させなかった場合
年次有給休暇を年5日取得させなかった場合に、労働基準法第120条により30万円以下の罰金になります。
しかも、この罰金は会社単位ではなく、対象となる労働者1人につき計算されます。
例えば10人取得していなければ、10人×30万円=300万になってしまいます。
2.就業規則に記載していないで、使用者による時季指定を行う場合
年5日の年次有給休暇を労働者に取得させることが使用者の義務となっています。5日取っていない社員に対して、使用者は時季を指定して年次有給休暇を取得させなければなりません。
これを「年5日の時季指定義務」と言いますが、この年5日の時季指定義務も、きちんと運用しないと罰則があります。
時季指定をする場合には、就業規則に時季指定の対象となる労働者の範囲及び時季指定の方法等について記載しなければなりません。
これをしていない場合は、労働基準法第120条により30万円以下の罰金になります。
就業規則に規定しても、まだ安心してはいけません。年次有給休暇の取得義務があるからといって、本人の意向を無視して企業側が勝手に取得させることはできません。
あくまでも、本人の意向を踏まえてということを忘れないようにしてください。
3.労働者の請求する時季に所定の年次有給休暇を与えなかった場合
労働者の請求する時季に所定の年次有給休暇を与えなかった場合は、労働基準法第119条により6か月以下の懲役または 30万円以下の罰金になります。
労働基準法に則って運用しないと、思わぬ罰則を科されてしまうので注意しましょう。
年次有給休暇を取得してもらう方法
年5日の有給休暇を取得してもらうための方法をご紹介いたします。
基準を満たせるようにするにはどうすればいいか
年次有給休暇の取得は、社員が自主的に取得してくれるのが一番よいのですが、なんらかの事情で取得できない社員もいます。
そんなときに、会社が時季指定をして、社員に有給休暇を取得させる「計画的付与制度」を検討されてはいかがでしょうか。
「計画的付与制度」は、大きく3つの方法があります。
1.一斉付与方式
会社が指定した日に社員全員に一斉に年次有給休暇を取得してもらう方法です。
2.交替制付与方式
1のように会社単位でなく、課などのグループ単位で年次有給休暇を取得してもらう方法です。
3.個人別付与方式
社員ごとに年次有給休暇を取得してもらう方法です。
ここで注意していただきたいのは、(1)(2)(3)を行うには、就業規則に規定を定めることと労使協定の締結が必要だという点です。
計画的付与制度など、会社として社員に年次有給休暇を取得するために最大限に努力したとします。
しかし、結果的に年5日の年次有給休暇を取得できなかった場合はどうなるのでしょうか?残念ながら、会社は法違反を問われることになります。
「取れなかった」は通らないので、各社員に確実に取得してもらうようにしましょう。
そして、社員に無事に年5日の年次有給休暇を取得してもらっても、まだ安心してはいけません。
会社は年5日の年次有給休暇を取得させるだけでなく、社員ごとに「年次有給休暇管理簿」を作成し、それを3年間保存しなければなりません。
まとめ
会社が再三にわたり、社員に年5日の年次有給休暇を取得するように言っても、社員が取得してくれないと、会社は法違反に問われてしまいます。
年次有給管理簿で、各社員にいつ年次有給休暇が付与され、いつまでに年5日の年次有給休暇を取得してもらわないといけないのかを、きちんと管理するようにしましょう。
また、時季指定や計画的付与制度を行う場合は、就業規則の規定を定めることや労使協定を締結することを忘れないようにしましょう。
会社は「知らなかった」ではすまされないので、このコラムで、改めてご確認いただけると幸いです。
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