残業時間はどこから数えるの?法定労働時間と所定労働時間の違いから解説
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時間外労働の上限規制により残業の平均時間は減少しているといわれます。
しかし、1日の所定労働時間は働いている企業によって異なり、1日8時間働く企業もあれば、1日7時間の企業もあるでしょう。
1日の所定労働時間が7時間の会社の残業時間はどこから計算すればよいのでしょうか。
法定労働時間と所定労働時間の違いから解説します。
法定労働時間と所定労働時間の違いはどこにある?
最初に法定労働時間と所定労働時間の違いはどこにあるのでしょうか。
簡単に言えば、
- 法定労働時間:法律で定められた労働時間
- 所定労働時間:企業が独自に定めた労働時間
といった違いがあります。以下で、その違いについて詳しく解説します。
法定労働時間についておさらい
最初に法定労働時間とは何かについておさらいをしつつ、所定労働時間との違いについて今一度しっかりと確認しましょう。
労働時間は「原則1日8時間以内・週40時間以内」と労働基準法32条に定められています。
これが法定労働時間と呼ばれるものです。
法定労働時間を超えて時間外労働や休日労働をさせる場合には、「時間外労働・休日労働に関する協定」、いわゆる「36協定」を締結し、その内容を「時間外労働・休日労働に関する協定届(36協定届)」に記載して、労働基準監督署に届け出る必要があります。
そして、この法定労働時間を超えて働いた時間については、労働基準法37条に定められた割増賃金の支払いが必要です。
もちろん、36協定を締結することなく法定労働時間を超えて労働させてしまった場合であっても、割増賃金は支払わなければなりません。
所定労働時間とはなにか
所定労働時間とは、企業独自に定めた労働時間を指します。
法定労働時間の範囲内であれば企業で自由に定めることができるため、所定労働時間と法定労働時間が必ずしも一致するとは限りません。
就業規則や雇用契約書などで定めた時間が所定労働時間であり、法定労働時間の範囲であれば、残業をしても割増賃金は発生しないことになります。
例えば所定労働時間が7時間の企業で2時間の残業をしたとしましょう。
この場合、1日8時間以内の範囲に含まれる1時間は「法内残業」や「法定内残業」と呼ばれる残業であり、割増賃金は発生しません。
しかし、働いた分に対する1時間分の賃金は必要です。
残りの1時間分は法定労働時間を超える残業となることから、労働基準法で定める割増率(25%)以上の割増賃金が必要になります。
割増賃金は残業の時間帯や残業時間によって異なる
法定労働時間を超えて従業員を働かせた場合や週に1日または4週間を通じて4日以上必要な法定休日に従業員を働かせた場合には、割増賃金の支払いが必要です。
ケースごとに割増賃金の割増率を見てみましょう。
労働する時間帯 | 条件 | 割増賃金率 |
---|---|---|
法定時間内 | 所定労働時間を超えて残業したとき(1日8時間・1週40時間以内) | 0%以上 |
時間外労働 |
|
|
休日労働 | 法定休日に残業したとき | 35%以上 |
深夜労働 | 深夜(午後10時から翌日午前5時まで)労働をしたとき | 25%以上 |
時間外労働+深夜労働 | 法定労働時間を超える残業が深夜に及ぶとき | 25%+25% (50%以上) |
休日労働+深夜労働 | 法定休日の労働が深夜に及ぶとき | 35%+25% (60%以上) |
月60時間を超える時間外労働+深夜労働 | 法定労働時間を超える残業が1か月60時間を超え、かつ深夜労働となるとき | 50%+25% (75%以上) |
図解するとこのようなイメージとなります。
所定労働時間と法定労働時間の境目は?
所定労働時間と法定労働時間の境目がどこにあるかを1日の時間帯で見てみると明らかです。
所定労働時間が7時間(9:00〜17:00 1時間休憩)となる企業で23:00まで働いたケースで、所定労働時間と法定労働時間がどのようになるのかを見てみましょう。
以上で見るように、1日に9時から23時まで働いた場合の労働時間は休憩を除くと13時間となります。
所定労働時間は7時間。残業時間は6時間となり、内1時間は法定労働時間を超えない時間であり、割増賃金が必要とならない残業(1倍)となります。
4時間は法定労働時間を超える労働として25%(1.25倍)、1時間は法定労働時間を超えかつ深夜労働に該当する残業として50%(1.5倍)の割増賃金が必要です。
法定労働時間を超えても時間外労働にならないケースはある?
法定労働時間を超えて働いても時間外労働にならない例外があります。
例外となる特例や変形労働時間制について紹介します。
特例事業場とは?
労働者が常時10人未満の事業場に限って1週間の法定労働時間は44時間とする「特例措置対象事業場」と呼ばれる業種があります。
これらの事業場が法定労働時間の例外として認められる理由は、待機している時間が長いなどの手待ち時間の長さ、サービス業などの公衆の不便さなどにあり、以下の業種が該当します。
- 商業
卸売業、小売業、理美容業、倉庫業、その他の商業 - 映画・演劇業
映画の映写(映画館など映画製作事業を除くもの)、演劇、その他興業の事業 - 保健衛生業
病院、診療所、社会福祉施設、浴場業、その他の保健衛生業 - 接客娯楽業
旅館、飲食店、ゴルフ場、公園・遊園地、その他の接客娯楽業
変形労働時間制を導入した場合の残業時間とは
企業によっては、月末や年末年始、ゴールデンウィーク、土日祝祭日など、忙しくなる時期が決まっていて、どうしても労働時間を1日8時間・週40時間以内にすることができないこともあるでしょう。
このような場合に、業務の繁閑の差により、特定の日に労働時間が8時間をオーバーしたり、特定の週に労働時間が40時間を超えたりしても時間外労働とならない変形労働時間制を導入することが可能です。
変形労働時間制によって定めた労働時間の枠内であれば、原則となる法定労働時間を超えたとしても時間外労働にはなりません。変形労働時間制には、以下の4つがあります。
1.1箇月単位の変形労働時間制(労使協定の締結や就業規則に定めることにより導入)
4週間や1か月など、1か月以内の一定の期間を任意に定めて、その一定期間における1週間あたりの平均労働時間を40時間以内にすることで、特定の週や特定の日に法定労働時間を超えて働かせることができる制度です。
特例措置対象事業場は、週の平均労働時間を44時間以内にすることで導入することができます。
事前にシフトを組むことで、1日8時間を超える日や1週間で40時間(44時間)を超える週を作ることが可能になります。
2.1年単位の変形労働時間制(労使協定の締結により導入)
3か月や6か月、1年など、1か月を超え1年以内の一定の期間を任意に定めて、1週間当たりの平均労働時間を40時間以内にすることで、特定の週や特定の日に法定労働時間を超えて働かせることができる制度です。
特例措置対象事業場でも1週間の平均労働時間は40時間を超えることができません。
事前にシフトを組むことで、1日8時間を超える日や1週間で40時間を超える週を作ることが可能になります。
3.1週間単位の非定型的変形労働時間制(労使協定の締結により導入)
導入できる業種は労働者数30人未満の小売業、旅館、飲食店などに限定されますが、1週間単位で繁忙日などに柔軟に対応ができる制度です。
1週間の労働時間は40時間以内にする必要はありますが、1日10時間を上限として日ごとに1日の労働時間を定めることが可能になります。
4.フレックスタイム制(労使協定の締結により導入)
3か月以内の一定期間(清算期間)を平均して、1週間当たりの労働時間の平均が40時間以内になるように総労働時間を定めることで、労働者が日々の労働時間、始業・就業時刻をその総労働時間の範囲内で、自分で決めることができる制度です。
総労働時間(清算期間における所定労働時間)を事前に定めることで、1日8時間や1週間で40時間を超えて働くことも、1日6時間や週30時間など、1日や週の労働時間を短くして働くことも、労働者自身で決定することができます。
他の企業はどれくらい残業をしている?
他の企業はどれくらい残業をしているのかが気になる方もいるでしょう。厚生労働省が発表した「毎月勤労統計調査 令和3年分結果確報」から見ていきます。
毎月勤労統計から他の企業の残業時間を見てみよう
厚生労働省が発表した「毎月勤労統計調査 令和3年分結果確報」では、 一般労働者とパートタイム労働者の所定外労働時間、つまり残業時間の平均は9.7時間(対前年比5.1%増)となっています。
令和2年に比べて5.1%増加した原因は新型コロナウイルスの影響もあるでしょう。
令和3年の調査結果では、一般労働者の所定外労働時間は出勤日数19.5日に対して13.2時間、パートタイム労働者の所定外労働時間は出勤日数13.9日に対して2時間という状況です。
運輸業・郵便業は出勤日数19.2日に対して22.1時間(対前年比4.9%増加)、飲食サービス業は出勤日数13.6日に対して3.3時間(対前年比21.8%減少)と業種によって差が大きい状況です。
この数値にはサービス残業は含まれていないと考えられます。
そのため実際の残業時間が正確に反映しているとは一概にはいえませんが、少なくともまだまだ残業をしている企業が多く存在し、業種によって労働時間に差があることは、業種ごとに比較してみるとわかります。
自社の残業時間と比べてみてはいかがでしょうか。
まとめ
所定労働時間は企業独自に定めた労働時間を指し、法定労働時間と必ずしも一致するとは限りません。
また、法定労働時間を超えて従業員を働かせた場合には、割増賃金の支払いが必要になります。
残業時間は所定労働時間を超えた時間です。
割増賃金の支払いが必要になるのは法定労働時間を超えた時間となりますが、たとえ法定労働時間の範囲内でも所定労働時間を超えて働けば、働いた分に対する賃金が必要となることにも注意しましょう。
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