人事労務担当者が36協定を電子申請する前におさえておくべきポイント
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従業員に残業を命じる際に欠かせないものとして36協定の締結および届出があります。
昨今、電子申請の急速な普及に伴い、36協定の届出も電子申請の対象となりました。
電子申請する場合、対面や郵送での申請と異なり、電子申請ならではの注意点があります。
今回は36協定を電子申請する場合の注意点について解説します。
電子申請の36協定はどのような点に留意すべきか?
電子申請の36協定は対面・郵送申請とは違った留意点があります。
多くの担当者が陥りやすい部分について確認していきましょう。
電子申請のステップ
電子申請事体は普及しているものの36協定についても電子申請が可能になりました。
具体的なステップと注意点を確認していきましょう。
まずは、e-Gov電子申請アプリケーションをダウンロードし、ログインできる状態に持って行く必要があります。
ログインの仕方は原則として3つの選択肢があります。
1つは通常通り、e-Govからログイン、2つ目の選択肢はGビズIDでログイン、3つ目の選択肢はMicrosoftアカウントでログインです。
どれを使ったら36協定の電子申請を優先的に審査してもらえるということはありませんので、好みで選択をします。
ログイン後は実際に36協定の作成に移ります。
36協定と言っても2024年4月まで時間外労働上限規制の猶予対象となっている医師等、複数の書式があります。
自社の業種に合致した協定を選択しましょう。
万が一、前年の控えと照らし合わせても判断がつかない場合は、会社の住所を所轄する労働基準監督署へ相談しておくのが無難です。
誤って本来使用すべき書式と違った書式を用いていた場合、期限内に提出ができていたとしても、無効扱いとなり、36協定の効果が会社内に及ばないという事態に陥る場合がありますので、必ず36協定の書式を選ぶ段階で確認するようにしましょう。
電子申請での36協定の記載例
電子申請で36協定を申請する場合、現在は入力必須の項目があるため、それに従い入力していくだけで完了となりますが、一部、受理されないケースがあるため、確認しておきましょう。
電子申請での36協定が受理されないケース
36協定を電子申請する場合、協定締結後速やかに申請すべきことは言うまでもありませんが、申請したものの、受理されないケースもあります。
具体的な事例を交えて確認していきましょう。
近年、入力必須となった項目が増えている関係で、未記載ゆえに受理されないケースは大幅に減っています。
そもそも入力しなければエラーとなり、次の入力に移れない仕様になったためです。
実務上受理されないケースは、社労士が代行申請する場合に次の2点を添付しなければなりません。
1つは提出代行証明書、もう1つが社労士証票の写しです。
この書類のいずれかまたは双方が添付されていない場合は、受理されません。
記載例となる画像を確認し、速やかな申請を心掛けましょう。また、特に画像の黄色部分は注意が必要で、労働者代表を決めるにあたっては、どのような選出方法を用いたかを記載する必要があります。
引用:2012年4月~36協定届が新しくなります|厚生労働省・都道府県労働局・労働基準監督署
併せて、使用者が恣意的に決めた代表者でないことを認めるチェックボックスにチェックをいれなければなりません。
電子申請で36協定が受理されないケースとしては、代表取締役が労働者代表となっているケースや1年間の残業時間の上限である360時間を超えた時間を記載している場合などが挙げられます。
36協定電子申請のメリットとデメリット
36協定の電子申請に限った話ではありませんが、会社への影響範囲が大きい36協定の電子申請におけるメリットとデメリットを確認していきましょう。
36協定を電子申請するにあたっての注意点
電子申請は対面での申請と異なり、軽微な誤りであった場合にその場で修正ができません。
また、送信エラーなどで実際に届出ができていなかった場合などの管理は全て自身でしなければなりません。
36協定を電子申請するメリット
端的には、以下の3つのメリットがあります。
- 郵送コストの削減
- 人的リソースの節約
- 開庁時間に拘束されない
電子申請のメリットは言うまでもなく、郵送や対面申請に付随するコストがなくなる点です。
36協定は締結日までに申請ができていない場合、法律上残業を命じることができませんので、配達記録を残せる郵送を選択するのが一般的です。
配達記録が残せる郵送となれば、切手代だけでなく特定記録郵便や簡易書留にかかる費用も発生します。
忘れがちな点として正しい宛先に送る必要があります。
特定記録郵便の場合、ポストへの投函までは確認できますが、然るべき送り先に送れているのかは送り先を記載した自己の責任です。
仮に4月1日を起算日として1年間、36協定を締結する場合、遅くとも4月1日の残業が発生するよりも前に届出ができていなければ違法となります。
次に、対面申請の場合、労働基準監督署までの往復の交通費が発生し、窓口の開庁時間に訪問せざるを得ないという制約がつきます。
往復の交通費は毎回発生するものですし、万が一突発的な業務が舞い込んできた際には開庁時間に間に合わないという事態も十分に想定できます。
電子申請の場合、金銭的なコストが回避できる点はメリットです。
また、原則として24時間いつでも申請できる点も電子申請のメリットです。
対面申請の場合に避けて通れない開庁時間内に申請しなければならないという制約はなく、突発的な業務が舞い込んできたとしても、開庁時間を過ぎてしまったとしても電子申請であれば申請できます。
以上の点を総合考慮すると、電子申請のメリットは金銭的なコストの圧縮と申請にあたって時間的に余裕を持たせられるというメリットに行きつきます。
36協定を電子申請するデメリット
次に電子申請のデメリットは以下の3点です。
- 申請してしまう軽微な修正ができない
- 申請後すぐに受理されるわけではない
- 差し戻しされた場合は未締結の期間が生じる
電子申請は24時間申請できる反面、対面申請のようにその場で添削がされませんので、不受理となり、予定していた起算日から有効な36協定が締結できていないという状態にもなり得ます。
また、電子申請の需要は年々増加しており、年度末の3月25日頃に4月1日起算日の申請をしたものの、3月31日時点で受理されていないというケースがあります。
もちろん、申請した内容に疑義がなければ申請した日を持って受理されますが、差し戻しとなった際にはいくら3月25日に申請できていても3月25日に受付はされません。
36協定本社一括届出とは
36協定には「本社一括届出」という届出方式があります。
本社一括届出とは、例えば法人企業の中核的な機能を持つ部門において、他の事業所の36協定を一緒に届出することです。
本来、36協定は場所的に独立している事業所ごとに届出が必要となりますが、この「本社一括届出」を活用することで企業としては1回の届出で済みますので、事務処理を効率的にすすめることができます。
便利な活用方法ではありますが、誤解されているケースがありますので、概要を確認していきましょう。
本社一括届出における留意点
複数の支店を持つ企業の場合、本社一括申請が可能となりますが、いくつかの注意点があります。
まず、本社一括届出とは、複数の支店を持つ会社において、支店ごとに届出が義務付けられている36協定について、本社を管轄する労働基準監督署に一括して届出を行えるものです。
留意点として、所在地、事業場の名称、人数は異なっても問題ありませんが、協定する時間数と業務の種類が異なる場合はその時点で選択できません。
例えば、本社は事務機能のみであるものの、他の事業所が工場等の場合、業務の種類が異なるため、本社一括届出での申請は対象外となります。
言うまでもなく、時間数が全く同じということは稀であり、本社と業務の種類が全く同じと言うケースも多くはありませんので、実際に使える場面は限定的となります。
しかし、要件を満たした場合は、事務の簡素化にも繋がりますので積極的に導入したいものです。
また、旧来は全ての事業場について、1つの過半数労働組合(労働者の過半数が加入する労働組合)と36協定を締結している場合に限って本社一括届出が可能でした。
2021年3月末より、36協定の事業場ごとの代表者が異なっても、電子申請の場合のみ36協定の本社一括届出が可能になりました。
この点は、より広い範囲で本社一括届出ができ得る方向への改正となりました。
まとめ
36協定の電子申請は申請にかかるコストや労力を少なくしてくれるものですが、年々申請件数が増加しているという背景もあり、審査に時間を要している点が否めません。
無事に不備なく受付され、安堵できる状態になるには、対面申請より時間がかかる点はおさえておくべきです。
特にe-Gov電子申請では、定期的にメンテナンスがあり、確認したいときにタイムリーに確認ができないことや、アクセスが集中すると、動きが重たくなる点が指摘されており、電子申請であっても早めの申請を心掛けるに越したことはありません。
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